まいにち。まいにち。

「誰からも頼まれもしない」ことを勝手にしよう(森博嗣)

西海岸にて

会社の研修と休暇で1週間ほど西海岸(San Francisico、Seattle、Portland)へいってきた。その場を訪れて感じたことなどを以下かいていく。

 

・San Francisco
日本よりもおおよそ5度から10度ほど寒かった。特に朝晩が。

SFは坂が多く、東京の●●ヒルズとヒルがついているが、あれに比べると傾斜の角度は比べ物にならないほど急である。初台や神戸の元町あたりの坂あたりを想定しておくといいのかもしれない。

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◆多国籍料理
おそらく最初にやってきた各国の移民たちがそこで生活した名残だろう。サンフランシスコはとにかく坂が多く、生活するには厳しい環境だ。たとえばベトナムであったり、イタリアであったり、中華だったり。ニカラグアの料理も食べられる店もある。
初めて訪れる町には徒歩で歩いてその町がそんな場所なのかを観察するのが一番最初にやることなのだけれども、2月に訪れたオスロが面白く感じたように、若干危険に感じる場所でありながらも、こじゃれた店がぽつぽつある、というのが面白い町の定義だと思っている。一時期日本に上陸するといわれていたにもかかわらず立ち消えとなったTartine Bakeryがあるエリアはてっきりハイソサエティなエリアかと思いきや、周辺のミッションストリート(夜の駅は非常に危険、昼でも危険 ドラッグのにおいがただよう)には雑多な雰囲気があり、そのごちゃごちゃした感じがアジアの雰囲気を思い出す。

ちなみに研修は沖仲士であるエリック・ホッファーの「波止場日記」の舞台であるFisherman's Wharfだったのだが、残念ながら観光地化されているそのエリアはあまりよいところではなかった。

しかしそういうところでも、ひとつ大通りを越えると静かできれいな場所があったりするので面白い。

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ところどころに路上生活者がいるが、ヨーロッパのそれとは違い、静かにお金を落としてくれるのを待つスタイルだ。チップを支払う習慣があるゆえかもしれない。

スーパーに寄ってみるとレジはおおむね自動化されており、セルフ式でやるようになっている。日本でも一部の店では導入されているものの、まだ割合としてはまだ少ない。しかし、店員が少なくなったわけではなく、別の業務を行っているようだった。

 

◆公共機関
空港からは電車とバスがある。San Franciscoの中心部のUnion Squareあたりは電車の最寄り駅はあるものの、それよりも南側のエリアにはBusで行くしかない。もしくはTaxiやUberなど。Busはそれぞれの通り(St)にとまるので、地図であらかじめ確認しておけばいいのだが、各駅停車になりがちなので、急いでいく用事があるのであれば、Uberを使ったほうがいいだろう。しかし、バスもヨーロッパの大方の交通機関と同様に最初の登場から90分有効のため、日本のそれと比べると使い勝手はいい。

ちなみに、バスを止めるボタンはここでは昔の名残でひもを引っ張ると次止まるランプが点灯するようになっている。最新車両ではボタンがいくつかついているものもあるが、過去の習慣はそれほど簡単に断ちにくいものなのだな、と思わされる。

 

・Seattle
シアトルもまたSan Francisco同様に坂の町である。海沿いのPike Street marketは日本で言う築地のようなものかと思いきや、オープン時間は観光客向けに後ろ倒しされており、、多くの店は昼前にならないと開いていない。名物の店はいくつかあるのだが、結局自分がそこで買ったのは本だった。古本屋もあるのだ。

 

Amazon Day1
Amazonの自社ビルはすでに出来上がったものもあるが、Sphereと呼ばれる球状の施設はまだ完成はしていないようだ。熱帯植物が生えていそうな雰囲気である。ちなみに、Amazonian向けに毎朝バナナを1本つけている。が、ネイバーフッドを大切にするために、Amazonianでもバナナはもらえるそうだ。(バナナ目当てに来る人が多かったらしい)

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www.seattletimes.com

レジがないと話題のAmazon Goもあったが、残念ながら従業員でないと入れないようだ。しかし、路面からはバックヤードで食べ物を作っている人たちがみえ、少しだけほっとしたのも事実ではある。(完全に自動化されていないということで)

エントランスフロアは入ることができ、kindleのこれまでの世代が壁に飾られているのだが、よく考えてみたらProduct自身はこれくらいしかないんだよな、と思い知らされる。若干殺風景ではあった。

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◆中央図書館
Rem Koolhaasが率いるOMAが手がけた図書館。あまりにも奇抜すぎるその外観が目を引くのだが、大通りからのアプローチは特別違和感を覚えない。それよりも、高層の建物ができつつある中心部である。内部は10F建てになっていて、図書館のほかにもハローワークもあり、誰でも自由に入れるし、Wifiも飛んでいるのでいつまでもいられる。(ロンドンを旅行したときにはTate Modernに入り浸っていた)
シアトルには1日しかいなかったのだが、閉館のときまでいた。(常にそこにいたわけではなかったが)静まり返った図書館にキーボードをたたく音が聞こえる。近づいてみるとキーボードで何かを打っていると思いきや規則的なものしか聞こえてこないので、気晴らしにたたいているのだろう。Kill timeという言葉を思い出す。

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Dunkirk
クリストファーノーランの最新作をIMAXの球状シアターで見た。

Pacific Science Center - Home of Terracotta Warriors of the First Emperor

この日(21日)が初日だったので、1時間以上前に行くと、すでに会場を待ちわびた人たちが列になって床に座っている。彼らはおしゃべりに興じており、その雰囲気は日本ではめったに見られないものだった。ポップコーンとコークを夕食代わりにして開場するのを待ちわびた。
映画の内容は予告編からわかるように戦争映画である。内容についてはまだ日本公開は先なので詳細については差し控えるけれども、映画の中で語られるDunkirkという岸辺に取り残された兵士をドイツの攻撃から避難する為の立場の違う兵士達の戦いについて臨場感あふれる描写で描かれていた。ノーラン監督の作品は長いものが多いが(特にバットマンシリーズは、今回は100分ほどの作品だったが、映画館にいながらも戦争の中に閉じ込められたような感覚があり、この恐怖が早く去ってほしい(終わってほしい)、と思う瞬間が何度か訪れた。今回もサウンドトラックはハンス・ジマーで、時計の刻み音を効果的に使っており、緊張感が最後まで途切れない、文字通り引き込まれる体験だった。日本では9月公開。

 

・Portland

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アメリカ人が今一番移住したい町だというポートランド、果たしてほかの町とどう違うのか。2日しか滞在できなかったのでその理由は定かではないのだが、ワンブロックの距離もほかの町と比べると小さい60mほどである。公園があって(といっても日本でいう公園とは違って、芝生と大きな木が囲まれており、木陰にシートを敷いて休んでいる)、少し自転車で走れば森がある。(バス停のそばの草むらにはパクチーの一種が自生していた)森の中にある日本庭園(最近再オープン、隈研吾設計 青山にある根津美術館を髣髴とさせるつくりになっている。完成度は根津のほうが高い)

地理的にはシアトルとサンフランシスコの中間にあるのだが、気候はポートランドが一番暑かった。

なぜこの場所に引き寄せられるのか。他の町同様、町全体は公共機関よりも車を使って移動した方が効果的ではある。そして、他の町と同じくまたポートランドも中心部から離れたところのほうが良い店がある。といってもポートランドは大きく分けて4つの地域があり、それぞれ特徴のある部分なのだが、サンフランシスコと同様、というかほかの多くの町にもいえることではあるが、中心部の観光客がよく訪れる場所よりも、地元の人がよく訪れる場所のほうがよいものに出会える確率が高くなる。

 

◆Les caves
洞窟と名づけられたバーにはワインとそれに合うつまみを出してくれる店がある。オーナー自身もワインを作っているため、1を聞くと10以上のことが返ってくる。日本人の若い層は最近ワインを飲まないと聞くがどうなのか?と質問されたがこの答えには迷ってしまった。確かにビールのほうが豊富にあるのだが、それでも好きな人は好きではある。選択肢が豊富な分取り立てて固執することもない。私はどれでも行ける口だといった。つまみはそれなりだがワインの味は確かだった。ちなみに、アメリカなのでアメリカのワインだけを置いているかというとそう言うわけでもなく、世界の酒で特にオーナーがほれ込んでいる酒を選んでいる(とどうしても西側のものが上がってくる。)

アメリカ人が一番移住したい町といえども、路上生活者の姿は点在している(ほかの年比べると少ないが。人気があるためなのか、アクティブに取引を持ちかけられた。

 

*****
10日間程度の仕事と休暇で3箇所を回るのは正直体の負担が大きかった。どの町も初訪問だったためにいつもながらのもったいない病が発動してひとまずあちこち歩いてみることをする。すると、通り(Street)が変わるだけで環境もよくなったり悪くなったり、そういうものが歩いているだけでもよくわかるのが面白い。

◆Neighborhood
いずれのところも気さくに話かけてくれる(というか会話をはじめられるような雰囲気)ができていた。大体の店にはいると、How's going?と声をかけられる。バスを乗っていても、「あなたの服いいわね」とか「そのタトゥすてきだわ」のような会話がなされる。たいていそれらはすぐ終わってしまうのだが、日本でこれをやられるとたいてい変な目で見られるのはいうまでもない。日本ではたいてい挨拶をするのは仲間内であるものの、欧米では相手が危険ではないことを確認するために挨拶するというのを思い出した。

ポートランドの日本庭園の近くには美しく整えられた庭を持つ家が並んでいたが、その一角に、この場所は隣人の目によって犯罪を防いでいます。という標識があった。監視カメラを置いておけば一見にみえるが、そうではないことは以前日本で起きた事件を思い出せばわかるだろう(比較的警備の高いマンションで高齢者が殺害された事件がおきたが、しばらく発見が遅れた。)。いくらカメラがあっても何かが起こってからではたいてい遅いのであって、人の目による不連続だが継続的な監視は効果的だったりする。

とはいえ毎度毎度調子はどう?ときかれて疲れないわけではない。たまには一人になりたいときもある。

 

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◆Make America great againとオールジャパン

トランプ氏が声高にアメリカ第一主義を掲げている。新聞などを読んでいると内向き思考などど批判されているのが常だが、アメリカという国は人種のるつぼと呼ばれる一昔前と変わっておらず、多国籍のレストランが生き残っているのを見るにつけ、それこそがアメリカなのだ、とわかる。トランプ氏がアメリカに工場を作る外資を自分の手柄にする光景は大げさなパフォーマンスに写るが、ここで重要なのはアメリカのためにやってくれる企業は国内の企業出なくてもいいということだ。(彼はすでに国内の大手IT企業のCEOを集めて懇願はしているようだが、節税対策で画策している彼らにとっては難しい判断だろう、その点 ソフトバンクやアリババや鴻海の動きはしたたかに見える。

一方のオールジャパンは文字通り日本企業の集合体で何とかやっていく、という姿勢だ。そこには昔の精神論で大義名分で何とか(途中で脱落者が出ようが)頑張る、という国粋主義的な考えが透けて見える。外資の受け入れを断って成長が遅れたのは今に始まったことではなかった。

自国の発展のために外国の力を借りるのか、それとも自前主義でやるのか、答えは言わずもがなだが、数年ののちにその違いは明白になるだろう。