まいにち。まいにち。

「誰からも頼まれもしない」ことを勝手にしよう(森博嗣)

すべての人生がすばらしい、の裏にあるもの

 
 
「人生は一本道のマラソンなんかじゃない、人それぞれに選ぶ道がある。」
「誰だ人生をマラソンといったのは」
 
はじめてみたときは素直にいいCMだとは思った。なんだか背中をそっと押してくれるような温かい気持ちになる。
ただ、何度も見ているうちにこのCMが流される背景について考えてみた。
そのとき、あるコピーライターの方から聞いた話を思い出した。
 
ある求人サービスのコピーの依頼を受けた時に、会社を立ち上げたのかを質問した。
いわく、求人サービスははいわばマッチポンプのようなところがあるという。マッチポンプとはその名の通り一方ではマッチを擦って火を焚きつけ、その一方では燃えたマッチを消す。それを続けて市場に魅力があることをアピールする。一方は新卒採用、そしてもう一歩は中途採用だ。新卒採用が毎年定期的に行われるのに対して、中途採用は転職したいと思うニーズを開拓しなければならない。そんななか元々焚きつける側の会社にいた人がその傾向に疑問を持ち会社を飛び出して別の求人サービスを作った。その会社では転職を考えている人も一時の浮足立った流れに身を任せるのではなく、慎重に行動してほしい。
その話を踏まえてその会社のコピーは「転職は慎重に」というコピーになった。このコピーは今でも使われている。
 
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ちょうど転職の市場も丁度2月から3月に求人が多くなるという。CMの中にちりばめられている言葉も転職を考えている人にとっては耳に良い言葉だろう。特に転職は自分で行動を始めなくてはいけないから、一本道で走っていたランナーが一斉に自分の進みたい道を走っている姿に自分の姿を重ねることもあるのかもしれない。もちろん始まったばかりの就職活動者にとっても「自分らしい」生き方とはなんだろうと考えるきっかけを与える役割をしているのかもしれない。
 
巧いな、と思う。