まいにち。まいにち。

「誰からも頼まれもしない」ことを勝手にしよう(森博嗣)

Stay in Italy

イタリアを1週間ほど旅をした。

計画の当初の目的はポンペイ遺跡を見たいと思いながら計画を立て始めたけれども、計画を立て始めるのが遅かったことと、旅行本に書かれている南イタリアの治安の悪さを気にしすぎた結果、北イタリアのミラノとフィレンツェを訪ねることにした。
 
これまで何カ国か訪れてきた中で旅の中心となる目的は美術館を見て回ることであったけれど、今回はそれよりも、街を見て回りたいという気持ちが強かったので、2つの現地ツアーに参加することにした。
一つがミラノから車で1時間ほど北にあるコモ湖のツアー、そしてもう一つがフィレンツェから車で1.5時間程の所にあるSienaとSun Geminianoだった。
 
残念ながら旅行中の天候はあまり恵まれず、一日中快晴という日はなく、一日中雨だったり、雨が降ったりやんだりを繰り返し傘が手放せない日程だった。(以前春にフランスを訪れた時もそんな天候だった)
 
ツアーということで一つの場所に滞在できる時間は自分でその地に行く場合よりも短くなるが、現地ガイドの豊富な知識のおかげで楽しめることができた。
 
特に印象に残ったものなど
 
コモ湖がハリウッド俳優など富裕層の別荘や重要な会議や映画のロケ地として使用される場所と知られており、ガイドの豊富な知識がなかったならばただの洒落た家としか見えなかっただろう景色がより興味を持ってみることができた。
 
当初は何故この場所がそれほど重要な場所なのかは分からなかったのだが、景色の素晴らしさはもちろんのことイタリア北部はスイス、フランス、オーストリア等との境界であるとともに、ミラノのマルペンサ空港からもそれほど離れていないというアクセスのしやすさもあるのだろう。
 
Duomoの近くのPiazzo Realeでたまたま開催されていたクリムト展を見に行った。クリムトといえば接吻が強い印象を持っており、その作風を一貫していたのかと思いきやそれは彼の作風の大きな一面でもあるが、それだけではなかった。初期の裸体のデッサンでは優れた観察眼を持っており、それが筆遣いに洗われており、後期の写真と見まがう作品にも表れている。
一方で印象派の筆遣いで描いた作品もある 

http://www.klimtmilano.it/dopo-la-pioggia/

クリムトが代表として立ち上げたSecessionという活動があることは知っていたがクリムト自身が幅広い作風を持った優れた作家であることを知ることができた。
また、ベートーベンの第9のために書きあげた壁画や、女性の負の部分を前面に押し出した作品なども見ることができ、今回の旅で一番印象に残った展示だった。
展示が素晴らしいとカタログも買いたくなるのだが、ハードカバーで重たいので泣く泣くあきらめた。もうそろそろ展示のカタログも紙ではなく、電子書籍で発行されてもよいと思っているのだがまだ早いだろうか。
ちなみに、クリムト展の直前にはカンデンスキー展が開催されており、美術館内にカンデンスキー展はこちら、という表記が残っていた。(作品の入れ替えのための休館日がほとんどないのは直ぐ返却できるからだろうか)なんだかイタリアらしい。
 
イタリアを代表とする芸術家ではあるが、意外にも一番好きになったのがラファエロだった。
特にBrena pinacoteca(ブレラ美術大学にあるギャラリー)でみた2作品(そのうち一作品は修復されて間もなく公開されたもの)は素晴らしかった。ラファエロは名前は知りつつもよく知らないので調べてみようと思っている。
 
ミケランジェロはアカデミアにあるダビデ像の力強さに釘づけになる。特に体に対して手の大きさが印象に残っている。手のおおきさは心臓の大きさと同じといわれるが、自ら腑分けをして人体を調べていたミケランジェロはそれを見越してあのような大きさにしたのだろうか。
駆け足で回ってしまったメディチ礼拝堂にあるミケランジェロの彫刻も今にも動き出しそうな瑞々しい肉体がそのまま瞬間冷凍されたかのようなたたずまいだった。
水浴びをしておそらく漫画家の岩明均さんのキャラクターはミケランジェロの彫刻をモデルにしているのだろうな、と思わされる。
 
ボッティチェリはプリマヴェーラやヴィーナスの誕生はもちろん素晴らしかったが、「受胎告知」が一番気に行った。「受胎告知」はマリアがガブリエルからイエスを身ごもったことを告げられる一場面で同じ場面はダヴィンチなど多くの作家が描いているのを見ることができたが、ボッティチェリの作品ではマリアがガブリエルを受け入れつつも、戸惑いを描いており、なおかつそれが色鮮やかに描かれている。
 
 
イタリアは多くの小国がまとまってできた国で、それぞれの地域に強い思いを持っている人がいることを知る。
例えばシエナは元々独立した国だったが、約500年前にフィレンツェとの闘いに敗れて国を失った。500年というとずいぶんと長い期間に思えるが、土地を案内してくれた現地ガイドの説明では、フィレンツェの下に見られるのは納得いかない、とのこと。その証拠にシエナのDuomoに飾られてある絵はフィレンツェのDuomoよりも著名な作家による作品が置かれているとのこと(今回は自由時間が少なく見られなかったが次回訪れた時にでも見てみたい)
ちなみに007の「慰めの報酬(2008年)」の冒頭の舞台がシエナである。
 
 
駆け足でいろんな街を回ったけれども、次回おとずれるならばコモ周辺の山をトレッキングしたり、ワイナリーを訪れてみたい、などと旅から帰ってまもないのにまた次のことを考えはじめている。路面は石畳だけど、凸凹しているので雨が降ると直ぐにあちこちに水たまりができて歩きにくいし、タバコのポイ捨ては日常的に行われていたりして日本より悪いところを探せばいくつでもあげられるけれども、一度訪れてもまた行きたい、と思わせるものがあった。次回はいわゆる都会ではなく、少し郊外に泊まってみたい。