まいにち。まいにち。

「誰からも頼まれもしない」ことを勝手にしよう(森博嗣)

九州にて

既に時間が経過してしまったが年末に九州を旅行した。

 
海外には何度もいっているのに、国内はまだ数えるくらいしかいったことがない。
九州を選んだのは、まだ足を踏み入れたことがない土地だったからだ。
 
いざ行くとなると、あれもこれも、と生きたい場所を詰め込んでしまうのだが、行ったり戻ったりしないように一筆書きで旅程を組み、東京からの到着地と出発地を分けることにした。
 
旅に出る度に感じていることを専用の手帳に書いている。
「何故旅に出るのか?」その答えは以前ブログに書いたように、「孤独になるために旅に出る」のだった。
海外だと、日本の慣習との違いもあり、うろたえることもままあるけれども、違いを身を持って感じることで、自分の中の常識と思われていたことが「実はそうとはかぎらない」ことに気付く。それはとても個人的なものでもある。
では、国内はどうか。言葉は当然通じる。基本的なルールは同じだし、コンビニに足を踏み入れれば、東京にいるときとおおよそ変わらない光景がみられる。
それでもやはり違いはある。
 
以前ある人が静岡を旅行した時のコラムを書いていた。彼は、旅先に普段と違う異質なものを求めて旅をしたが、目的地で東京と変わらない光景を見つけてしまい、なんだか旅行気分が醒めてしまった、という。便利なものが導入されるタイムラグはあるが、都心ではやっているものも、いずれは地方へ行く。だからこそ、より注意深く違いはないのかを観察しなければならない。
 
***
 
前置きが長くなったけれども、今回の目的地は大きく分けて阿蘇と湯布院だった。
 
驚いたことに、韓国からの旅行客が大勢いた。(一部の区間では韓国語で案内をしている場所もあった)
 
・南阿蘇
阿蘇では水の名所がいくつもあることを初めて知った。いわゆる大型で観光地化されている所もあり、地元の人しか来ないようなところもあった。
予想はしていたが、私以外に歩道を歩いている人はほとんどおらず、車だけが行き来していた。
時折、大通りに車の音がせず、静寂が訪れる。この静寂は都会では感じられない。時が止まって私だけが動いているような錯覚にとらわれる。
そしてその静寂を破る倉庫のシャッターがきしみながら開く音を遠目に聞き、思わず身震いがした。
 
 
 
阿蘇は噴煙中ではあったが、天候に恵まれたおかげで自然が生きている姿を遠目から見ることができた(立ち入り制限はあったが、御嶽山のこともあり、さすがに近くまで行くことはためらった)
草千里という場所に降り立ち、太陽が目の前の湿地に貼る氷が解ける音を聞く。遠くから3人組の男子がやってきて氷の上で遊ぶ。
周りには音を遮るものが何もない。そのため、彼らの姿は親指と人差し指の中に入るくらいの大きさのに、彼らの声だけがはっきりと聞こえてくる。
はしゃぐ3人組を見て、多和田葉子がサーカスの熊を3世代にわたってつづった雪の練習生を思い出す。
 

http://instagram.com/p/xI1WyQF1un/

雪の練習生(小さく3つの点に見えるのが人)

 
・湯布院
湯布院は「湯」という文字が入っているためか、勝手に温かいイメージを持っていたのだけれども、むしろ阿蘇よりも寒かった。
夕時は曇りだったのに、朝は少しづつ晴れていく。周囲の山々に太陽が当たりながら刻々とその場所を移動しているのをぼんやりとながめながら、山はいいものだな、と独りごち、何度も撮ってしまう。景色はそれほど変わらないはずなのに、何かをとらえたがっていた。
 
駅前で自転車を借りて金鱗湖の湯けむりを見る。風に吹かれながら自由自在に動く水蒸気はまるで龍のようだった。訪れた時にはすっきりとしない天気だったけれども、湖に夕日が差し込んだらきっと魚の鱗のように輝くのだろう。
 
観光地化されてしまっている駅周辺にくらべて、山頂に近い所はまだそれほど人は多くいない。
湯布院には高級旅館があり、その旅館の土産物屋は宿泊客でなくとも見ることができる。
金隣湖近くの宿はPBとして様々な商品をうっていた、が、結局買わなかった。山の付近の一番ランクの高い旅館に展示されている品はPBではなかったが、目利きの良い人が選んでいるようだった。隣には喫茶室があったけれどもそこは宿泊客だけが使える場所、とのこと。


無量塔|M U R A T A

 
 
 
駅前で見つけたパンフレットに平日しか営業しないお茶屋があることを知る。
幸運なことに最終日のバスの時間までに立ち寄ることができた。昼と夜は和食料理を開いていて、少しの間閉店していたのだという。
リノベーションされた屋敷に重厚感のあるカウンターでおはぎと緑茶を飲む。
以前京都を訪れた時に、緑茶の抽出温度は高ければ高いほどいいものではなく、一定の温度で出すことが必要なのだ、と丁寧に図解してくれた人がいた。
それを思い出すように、湯を2つの器に入れ分け、温度を調節してから一杯分の茶葉を入れた急須に注ぐ。
茶葉に含まれた水分の最後の一滴までを切りだす。手際良く。私が女性だったら思わず「好きです」と口走ってしまいそうに、引き込まれてしまった。
 
 
***
 
 
2泊3日でひたすら歩いた。それでも現地の移動はバスを利用した。
一日ごとに移動していたので早足になってしまったが充実した旅になったと思う。
 
混むだろうけれども、緑が綺麗な時期にまた訪れたい。