瞳のきれいな人
目が合ったとき、思わず息を呑んだ。
真っ直ぐにこちらに目を向けるので、見透かされた気持ちになって”目をそらしてしまおうか”という思いが頭をよぎったけれど、その人の目に真っ直ぐに向き合った。
視線を合わせると、瞳孔を捕らえている自分に気づく。
「恐れはない」そう自分に言い聞かせながら、目の前の人に話をする。
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以前上野でカルティエ展を見たとき、展示された宝石の数々に思わず心奪われた。
ガラスの向こうにある宝石を見つめながら、普段関心がない自分が何故見とれてしまったのだろうとも考えた。
そして、自分が美しいと思っているのは宝石そのものではなく、ライトに照らされた宝石が乱反射する光そのものに心が動いているのだと知った。
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彼女の目を見たときにその時に見た宝石を思い出した。
虹彩が紫色をした目は光り輝いてはいなかった。けれど、瞳の中に光を探している自分がいた。
視線が離れた後、その目をまた見つめたいという気持ちが芽生えていた。
(一部フィクションです)