まいにち。まいにち。

「誰からも頼まれもしない」ことを勝手にしよう(森博嗣)

経験と直感と理詰めの間

先日あるイベントにいってきた。

今21_21 desigin sightで行われている デザインあ展にかかわっている人たちの話。
 
デザインあの中で一番人気の「解散!」を作っている人や
今回の展示のために作られた本にかかわっている人や
ETVの0655や2355にかかわっている人達の話を聞いた。
 
印象的だった言葉たちをかいつまんで紹介する。
 
1.「解散!」について
元々グラフィックデザインをやっていた。きっかけはカメラを買ったことだった。そして自分のHP用にコマ撮りアニメを作ってみた。そしたらとても面白い。それが、目にとまり、番組を始めるにあたって参加することになった。
 
最初に「解散!」のプロトタイプを見せたときに既にリミッターははずれていた。
打ち合わせで始めてそれをみた人は、「そこまでやっちゃったか。もう後には引けないな」と思ったそうだけれど、やっている本人としては楽しくて仕方がない。やらされているわけではなく、「やったら絶対面白いものができる」と思っているので、やる。
 
やっているうちに楽をしようと考えたことはありませんか?という質問が出たけれど、
本人はそう考えたことはない。ただ、やっているうちにコツがつかめてくるので、だんだん作業が手早くできる。
楽をしようと考えるのではなくて、できるもののハードルを上げていく。その結果として人気のコーナーになる。
 
2.プロではないので知識と論理で世界を見る。
 
2355にかかわっている人は、AA'=BB'というブログを更新している。
 
何気なく素通りしてしまいそうなことでも、それを読むことで気付きが生まれる。全く別の者のように思えるのに、どこか関連している。
「どうしてそういうことができるんですか?」「知識です。」
知識は景色の解像度を上げる。ただの景色と思っていたものを、色々な角度からとらえられることができる。
なんか気になる→それってこうなんじゃないか?と常に問いかける。
 
普段は子供用玩具の商品開発をしている。開発者は売れる物を作らないといけない。だけど自分はプロではない。だから、商品を手に取る人が売り場で見て使えそうだな、と思えるような仕掛けをいれる。それは全て理由がある。結果として売れなかったとしても、次はその理由を除いてやればいい。売れる物に理由はないものもあるが、売れなかったものには必ず理由がある。
 
3.本を作る人の話
今回本を作るにあたって、解散!のコマ撮り写真からいくつかピックアップした。不思議なことに、一つとして同じものはないのに、この写真がいい、と判断したものは、解散!の作者の人が選んだものとほとんど同じだった。
何がいいのか?と言われると上手く説明ができない。ただ、「しっくりくる」。会社に入って初めてやった仕事が文字組みだった。それまで一度もやったことがなかったので、最初はとても時間がかかったけれど、馴れてくるとだんだん時間をかけずに上手くできるようになる。最終調整は0.01単位。それでも、馴れてくると「後これくらいだな」と「わかってくる」 最近は制御できないデザインというものが気になっている。
 
「デザインあ」というタイトルは、文字をばらばらにしたものを紙の上に載せてそのうえで紙を叩いて微妙にずれたものから構成されている。あの微妙のゆがみは人には制御できない動きだ。だけど、あの5つの文字はそれぞれこの傾き具合がいい、と別々に分けて良いと思ったものをピックアップしている。
制御できない動き、だけど、選定というフィルター(デザイナー)が入ることによってそこに存在している。
 
***
 
1と3の人たちはデザイナーで、2の人はデザイナーではない。1と3の人たちはいわば経験によって感覚を磨き、そのうえで言葉にはできないけれども、ぴたっとした判断をしている。
一方2の人はプロではないと自認する。それ故で、知識を蓄え、論理的に判断している。しかし、私のような普通の人からその文章や本「差分」を読むと大きな気づきを与えてくれる。
 

差分

差分

 

とても刺激的な時間だった。