まいにち。まいにち。

「誰からも頼まれもしない」ことを勝手にしよう(森博嗣)

一寸先の想像

新聞でこの事件のことを知ったのだが、わざわざ紙面を割いてまで伝えるニュースなのだろうと疑問に思った。

 
 
あくまで想像であるが、通報者と消防士の立場を考えてみる。
 
通報者は市民の生活を守る立場の人間が職務に怠慢な態度を示していたため、親切のつもりで連絡したのかもしれない。
 
一方消防士は、数時間でまた勤務が始まることに若干の憤りもあったことだろう。
 
消防士も人間であるから当然喜怒哀楽はある。Twitterがなければ周囲に愚痴をこぼすくらいで終わっていたかもしれないことが、つぶやきという形のあるデータとして投じてしまった。
 
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誰が言い出したのかは忘れてしまったが、実名でSNSをすれば自らの発言に責任を持つようになり、不用意な言動への抑止力となると主張していた人がいた。
 
私がフォローしている人の中には何名か実名でしている人もいるが、圧倒的に少数である。彼らがどうして実名を使っているのかは分からない。ただ、少なくとも彼らは自分自身がつぶやく内容には注意を払っているように思えるし、そのようなつぶやきを見かけたこともある。
 
ある人はこういうつぶやきを残していた。
 
 

「フォロワー」という何となく聞こえの良い名称についガードを緩めがち。冷静に考えれば当たり前だけれども、ファンとか友人とかとは全く違う。実質は「とりあえず読んでいる人」であり、「あなたの呟きを監視している人」でもある。

— Y.Kimoto (@Artificier_nuit) 2011, 6月 20

 

その監視している人は普段はスルーしていても、今回のような出来事が起こったときに拡散するかもしれない。それがそのつぶやきを見た人が決めることであって、つぶやいた人は止めることはできない。(つぶやきを削除すれば公式RTは消せるが非公式RTであれば残ってしまう)
 
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以前映画化もされたミレニアム三部作。そヒロイン リスベット・サランデルは小柄ながら攻撃的な女性として描かれていた。元々は彼女の不遇な過去にあるのだが、彼女が精神病院から独り立ちをするきっかけとなった出来事があった。それは彼女の後見人となる精神科医と結んだ約束である。それまではリスベットは何か気に入らないことが起こると暴力をふるいがちであった。そこで、彼女を対応することとなった精神科医はこんな感じのことを言った。
 
「暴力に訴えようとした時に、もし振るったらどういう結果になるか想像してみなさい。もし、感情に任せて行動をしたら、またあなたは攻撃的な人だという目で見られて、再度病院に入りなおさなくなるかもしれない。」
 
この少し先の行動をしたどうなるか、を意識することで、それからリスベットは以前のように攻撃的ではなくなった。
 
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あなたをフォローしているファンもしくは監視している人はお節介な人もいるかもしれない。
通報するほど暇なのかもしれない。
 
わざわざニュースにしたのも、決して思わず本音をこぼした人をつるしあげるわけではなく、今後このようなことが起こらないよう注意喚起のためかもしれない(と信じたい)
 
お節介な人だと嘆くこともできるが、残念ながら他人を変えるのは難しい。
だから少しばかり感情的になる前にはその鬱憤をつぶやいた後のことを「想像」してみることが自分を守ることになるのだろう。