まいにち。まいにち。

「誰からも頼まれもしない」ことを勝手にしよう(森博嗣)

Critical Thinkingのススメ

2015年に入って半分は過ぎたものの、色々と自分自身、心揺さぶられたり、情報に翻弄されている人を見たりして、あらためてcritical thinkingの重要性を感じている。
 
critical thinkingは批判的思考とも訳されるものの、つまらない粗さがしをするために使うのではなく、また、非難するための道具でもない。状況をできる限りフラット状態で受け止めたうえで、目の前にある問題をより深く考えるするための方法である。
 
ここ最近critical thinkingが重要だと感じるようになったのは、Twitterfacebookを通じて容易に専門家や研究者の意見を目にすることができる一方で、その膨大な考えをそのまま「そうだ」と受け止めてしまってよいか、という疑問が生じているからだ。特に、日本語の場合は「人の属性」と「その人の意見」は紐づけられて受け止められていることが多い。
それは別の名前で権威主義とも呼ばれることもあるが、この人の意見なら全て正しい、ということはない。意見ではなく人を無条件に受け入れてしまうことの抑止として自ら批判的に考えることが必要になる。
 
特に重要だと思われる点を紹介する。
 
 
●フラットな状況をつくる(自身の傾向を知る)

フラットな状態で考えるためには自分の思考の傾向を知っておく必要がある。簡単な例を挙げれば、楽観的か、悲観的か、である。

何か自分の予想していなかったことが起きた時に、悪いことばかりが思い浮かんでくるか、それとも、その逆か。デメリットばかり浮かんでくると、それを組み合わせてストーリーを作ってしまう。(これは状況を予測するための人間の性でもある。)

手持ちの状況を判断するのに偏った条件でしか集めてこなければ、集まった状況から生まれてくる予測もまた悲観的な状況のものに偏る。そのため、仮に自分が悲観的あるならば、意識してメリットになることに目を向ける必要がある。
 
フラットな状況と簡単に書いてしまったが、自身の性格の傾向はもとより、性別、立場(年齢(世代)、職務の地位など)、国籍によって、考えのベースとなるものは異なる。それをフラットにするというのは自分の価値観の元になっているアイデンティティについてもよく知っておかなくてはならない。自分が当たり前に考えている思考のベースになっているものにより意識的になっておく必要がある。

●陥りがちな傾向に留意する
文字情報よりもグラフや画像で示されたものは視覚的にわかりやすいが、その分誤った考えをしがちになる。
  • 相関関係を因果関係と同一のものとして考える・・・直接の因果関係は読みとれない、もしくは表に洗われていない別の要因がある
  • 演繹の導きによる結論のずれ・・・AならばB BならばC よってAならばCということは数学上は言えるかもしれないが、その間に暗黙の条件が入っている可能性がある。そのため、論理的に結論を出していても、それにあてはまるものはほとんどないということもありうる

例) 「Yes、Minister」の一場面より

徴兵制度の復活」という話題について思い通りの答えを得るための問答

「あなたは多くの若者が失業しているのを心配していますか?」

「はい」

「10代の若者の犯罪が増えているのが心配ですか?」

「はい」

「我が国の中学校には規律が欠けていると思いますか?」

「はい」

「若い世代の人々も人生において多少の権威と指導を喜んで受け入れると思いますか?」

「はい」

「彼らは、挑戦に応じると思いますか?」

「はい」

「あなたは、徴兵制の復活を支持しますか?」

「ああ、・・・ええと、そうおもいます」

「はいですか、いいえですか?」

「はい」

***

同じような手順で正反対の答えを引き出す方法もある

 

「あなたは戦争の危険を心配しますか?」

「はい」

「若者に武器を持たせ、人殺しを教えるのは危険だと考えますか?」

「はい」

「人々にその意思に反して武器をとることを強要するのは誤りだと思いますか?」

「はい」

「あなたは、徴兵制の復活に反対しますか?」

「はい」

  「弁護のゴールデンルール」より

  • 簡潔でわかりやすいものが受け入れられやすい・・・複雑な要因が重なっていても、わかりやすい一点があればその問題について語ることができる(語れてしまう)。これにより、要因中で優先順位をつけて議論されるべき問題が棚上げされ、目につきやすいところばかり(たとえそれが全体の末節であっても)語られることがある。
***
 
詳細についてはcritical thinkingの本を読むことをすすめるが、自分自身の考え方の傾向に自覚的であればある程、すれ違いは小さくて済むのではないかと思う。より大きな考えの根本では文化の違いによるものであるが、これも自分が当てはまるか否かではなく、傾向として予め知っておくだけでも他の国の人と接する時にいわゆるカルチャーショックを受けることは少なくなると思われる。
 

クリティカルシンキング (入門篇)

異文化コミュニケーションのA to Z―理論と実践の両面からわかる

 ※二冊とも説明と練習問題が充実しているので読みやすい。