まいにち。まいにち。

「誰からも頼まれもしない」ことを勝手にしよう(森博嗣)

ストックホルムとヘルシンキにて

オスロから1時間足らずでストックホルムへ。ここには3時間くらいのトランジットがある。
3時間で市内観光などほとんど難しいだろうな、とあきらめていたが、中央駅と空港を30分弱で結んでいる特急列車Arlanda Expressがある。
 
ストックホルムで訪れたい場所は2か所あって、一つ目が@suzunaさんがおすすめしていたKonditori Valand、もう一つはNaturkompaniet(アウトドア用品店)だった。
Konditoriはスウェーデン語でcafeのこと。
 
 
Valandはドイツから来たオーナー夫妻が始めたものでスウェーデンの環境変化によって、営業時間に変更は出たものの、今は息子さんが主体となって継続している。
 
平日の昼過ぎに降り立った中央駅は静寂に包まれていて、降り立ったレーンがあまりに静かだったので人通り少ないのかな、と一瞬不安になったがなんてことはない、
特急列車と在来線は分かれており、中心部に行くにしたがって人の流れは増えていった。駅でチケットを買うのにカードが使えなくて困ったが、隣の人がそっち壊れてるからこっち使いなよ、と声をかけてくれて助かった。さすがにノルウェーの二の舞はこりごりだ。
 
スウェーデンデンマークと同じく、どちらかというと人種は少ないほうなのかな、と思いきや、周りを見る限りでは多様な人がいる。

f:id:schol_e:20170220142441j:plain

f:id:schol_e:20170220142004j:plain

ようやく訪れたValandは静かな空間だったけれども、大方の席は埋まっていた。奥の席から店内を見渡すと、静かにおしゃべりしたり、パソコンで作業したり、子供連れの人がいたりと多くの人に好かれている店なのだな、とすぐにわかったし、私もそのうちの一人になった。壁の色と赤色の照明のコントラストが空間に落ち着きを与えていて、オーナーさんが手がけた家具も違和感なくそこに収まっている。いつまでもここにいられるな、と思いながらも、いられる時間は限られている。(とはいえ、30分ほどぼーっとこのカフェにいた)
 
 
名残惜し見ながらも外に出て、すぐ近くの Naturkompaniet へ行く。
もう少しで旅も終わりだが、寒さに備えて帽子をようやく買い、セールにはなっていたけどあったかそうなソックスを買った。カードで決済すると、店員の方が「レシートはいるかい?」と聞く。日本では当たり前のようにもらえるレシートも、こちらでは受け取らない人が多いのだろうか。「もちろん」と答えると、「お守りだからね」と気の利いた言葉で返される。そういうニュアンスも好きなところだ。
 
帰りも特急列車を使ってあっという間に空港に戻ってきた。次回はちゃんといろんなところを回ってみたい。
 
***
ストックホルムからまた1時間ほど空を飛び、ヘルシンキにやってきた。しかし、ここでlost baggageしてしまう。おそらくトランジットの間でどこかへ行ってしまったのだろう。仕方なく手続きをして宿へ向かう。6時間以内に荷物が戻ってきたら補償は効かないが、もう夜なので朝になっても連絡がなかったら身の回りの最低限の品を買うしかない。降り立ったヘルシンキはこれまでのどの国よりも寒かったけれども、宿に着いた後は倒れるようにして眠った。(荷物は無事次の日の夜に戻ってきた)
 
北欧といえども日の出時間は東京と変わらないか少し遅いくらいだ。白夜のイメージがあったけれどもそれは夏だった。荷物がなくなって、かなり気分は落ち込んでいたけれども、せっかく旅行に来たのに楽しまないと意味はないなと考えを変えた。近くのマックを食べながら、行き先を検討した。その結果、Aaltoの建物を見る一日となった。
 
Studio Aalto
一日に1回だけガイドツアーを開催するこの家は以前Aaltoの事務所があった場所だ。今でもここで働いている方々がいて、ちょうど昼休みの時を利用してガイドツアーが開かれている。
Artekを立ち上げる前に検討していた曲木の組み合わせの検討やレンガの意匠だったり、実現はしなかった都市計画の模型などが展示されていた。事務所としての機能がメインゆえに白でほとんどが統一されていたが、共用スペースは居心地がよさそうな木を前面に押し出していた。個人的には自邸よりも好みだ。
 

f:id:schol_e:20170221182757j:plain

f:id:schol_e:20170221190900j:plain

Aalto house(自邸)
ひとつ前の事務所は3人しかいなかったのでここもあまり人は来ないのだろうか、と思っていたがそんなことはなく、10人ほどに増えた。事務所とは異なり、Aaltoが普段生活をしている空間は彼の興味分野が前面に押し出された空間だった。日本のすだれをイメージしたカーテンであったり、大量生産できなかったプロトタイプだったり、ヴェネチアで買ってきたダイニングチェアなど、フィン・ユールの自邸に比べると明らかに統一感はないけれども、それでも自分の好きなものを集めました、というプライベートな空間にあふれていてその人となりを垣間見える気がした。
外に抜けられる隠し扉があったが、ガイドの方も設置した目的なのかはわからないようだった。冷戦の時期でもあったから、優秀な頭脳を持つ彼は拉致の危険を感じていたのだろうか。
 

f:id:schol_e:20170221201143j:plain

f:id:schol_e:20170221205311j:plain

Finlandia Hall
会議とホールの両方の目的を兼ね備えた施設。45分の予定なのに、2倍近くの時間をかけて説明してくれた。大ホールや小ホール、カンファレンスルームなど多様な目的に対応した施設で、どこを見ても素晴らしい以外の言葉が見つからなかった。冷戦のさなかで完成したこの建物は、ロシアと欧州の中立国として対応し、そのため、監視できる施設も整っていた(今はその名残が残っている)大ホールでは機材の調整をしており、いつかここで生演奏を聴いてみたいという気持ちになった。空間のスケールは普段見慣れているスケールでないとその感覚を肌で感じるのは慣れが必要だな、とも思った。
 

f:id:schol_e:20170221222801j:plain

f:id:schol_e:20170221223650j:plain

Kampii Chapel
オランダのゴッホ美術館を彷彿とさせる楕円形の小さな教会。遠くから見るとスピーカーのようにも見える。天井や壁の緩やかな勾配が訪れるものを優しく包み込む
 

f:id:schol_e:20170221084525j:plain

f:id:schol_e:20170221155331j:plain

 

Temppeliaukion Church
岩で囲まれた教会は気づかなければ見逃してしまいそうだ。上の岩山は公園にもなっている。中に入っても切り立った山脈のような上層席だったり、光を取り入れるためのコンクリートのスリットだったりと、都会にいながらも山(自然)に囲まれた環境が体験できる。
f:id:schol_e:20170221101700j:plain 
 
日本に帰る間際にArtekによってDomus chairを買う。日本人の方がいて、丁寧に対応してもらえた。
 
 
書ききれなかったことはまた別の日記としますが、北欧の治安はおおむね安全で、長距離電車でなければジプシーに出会うこともなかったので久しぶりの海外だったけれども充実した2週間だった。
飛行機は6回乗った。北欧とひとくくりにしてしまいがちだけども、その国ごとにカラーはやはり異なり、次回の旅ではもう少し掘り下げてみたい。