まいにち。まいにち。

「誰からも頼まれもしない」ことを勝手にしよう(森博嗣)

psycho-passが面白い

10月から始まったサイコパスpsycho-pass)の続編(二期)を見ているのだが、一期にひき続き面白い。
 
舞台は、人間のあらゆる心理状態や性格傾向の計測を可能とした「シビュラシステム」(以下シビュラ)が導入された西暦2112年の日本。人々はこの値を通称「PSYCHO-PASSサイコパス)」と呼び習わし、有害なストレスから解放された「理想的な人生」を送るため、その数値を指標として生きていた。
その中でも、犯罪に関しての数値は「犯罪係数」として計測されており、たとえ罪を犯していない者でも、規定値を超えれば「潜在犯」として裁かれていた 。
そのような監視社会においても発生する犯罪を抑圧するため、厚生省管轄の警察組織「公安局」の刑事は、シビュラシステムと有機的に接続されている特殊拳銃「ドミネーター」を用いて、治安維持活動を行なっていた。
この物語は、このような時代背景の中で働く公安局刑事課一係所属メンバーたちの活動と葛藤を描く”
 
 
このシステムにはいくつかの問題点がある。
 
①.シビュラシステムという絶対性
シビュラという完璧な知能により、人々は職を見つけるときには、自分で探すのではなく、シビュラが提示したカードの中から選ばなくてはならない。選択肢が複数あればよいが、自分の希望しない職業であったり、この職業にしか就けない、という一方的に決められてしまう。
(一期ではシステムによる一方的選択により自ら選択する機会を失い、不満を抱いている人々を焚きつけることでシステムの崩壊を企てた悪役が登場する)
 
※香港のある投資会社は裁量権のある役員の一人としてVITALと呼ばれるAIを導入しているようだ。代表のインタビューによると「人間は感情や他人の意見に影響を受けるが、機械は論理的で冷静な判断ができる」といっている。果たしてどう転ぶのだろうか。

②犯罪係数
犯罪係数は数値化され、ドミネーターやスキャナを通して、その人の犯罪係数が表示される。ドミネーターは対象の犯罪係数により形を変える。正常値ではトリガーは引けない。しかし、一定の数値以上になると、身柄確保のために、麻酔銃に変化する。しかし、一定数値よりも高くなりすぎると対象の命を奪う武器に変化する。
 
何らかの方法で犯罪係数を低く抑えたり、当初は高くて身柄確保とされたとしても、その後数値が一定以下になった場合はドミネーターでは執行できない。
 
※犯罪係数を元にして国で管理するというシステムは20世紀の中ほどに北欧で行われた断種法を想起させる。北欧は世界でも男女平等主義を掲げていた国であるにもかかわらず、結果として断種法が制定された。その原因として、病気の解明が未発達な故遺伝性ではない病気であっても親に症状があれば産まれてくる子供にも遺伝する、と考えられていたこともあるが、国が福祉国家を目指すために国民の健康を一元管理するようになり、国策として断種法を進めやすくなったことも挙げられる(参考:優生学と人間社会)


優生学と人間社会 - まいにち。まいにち。

 
③.ドミネーターを使用する際に、公安局の人間である認証が必要となる。しかし、ドミネーターを向けた対象が危険かどうかを判断するのはシビュラである(危険でないと判断したら、トリガーは引けない)。最後にトリガーを引くのは人間の役目になっている。
 
スイッチを押すか押さないかを決めることはできるが、危険かどうかを判断するのは外部に任せている。
そのため、仮に犯罪者ではなくとも、「犯罪係数」という数値のみを鵜呑みにして、トリガーを引けば、死ぬ必要のなかった犠牲者が生まれることもある。
 
これはハンナ・アーレントの「イェサレムのアイヒマン」をさせる。ナチスの元で多数のユダヤ人の虐殺の執行をしたアイヒマンは極悪非道の人間かと考えられていた。しかし、実際に裁判を傍聴したアーレントは、彼は自らの意思というものを持たず、ただ実直に上からの命令に従ったまでだった。自ら考えることを放棄し、ひたすらイエスマンに徹する。サイコパスに当てはめれば、例え罪のない人間(被害者や味方の公安局の人間)であっても抹殺対象という判定をだしたならば、疑問を持つこともなくトリガーを引くことを意味する。
 
***
 
一期が人間の弱みに注目した悪役だった。それゆえ、一期の悪役ではありながらも人間的な魅力のある人物だった。
一方で、現在放送中の二期では、シビュラシステムそのものの脆弱性を突くような悪役が登場し、絶対的なシステム(常識)を疑わせるような行動をしている。
 
 
一期では「法が人を守るんじゃない、人が法を守るのだ」と、絶対性のあるシステムの判断よりも、最終的なトリガーを引く(もしくは引かないことにする)人間に重きを置かれていた。
二期の1話目では主人公は安易にドミネーターのトリガーを引くのではなく、被疑者に対して対話を持ちかけることで落ち着かせ、犯罪係数を下げることで不要な血を避けていた。
 
話はまだあと2/3ほど残っているので今から追い付くのもそれほど時間はかからないだろう。
一挙放送もあるようなので興味を持った人は見てみてください。


『PSYCHO-PASS サイコパス 2』第1話~第5話振り返り上映会 - 2014/11/07 22:30開始 - ニコニコ生放送

 
ちなみに一期の素晴らしい考察(ネタばれあり)はこちらから


たらればさんの『PSYCHO=PASS サイコパス』考察 - Togetterまとめ

 

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